バリューエンジニアリング(Value Engineering)とは、製品やサービスの「価値」を「機能」と「コスト」との関係で捉え、価値を高める手法である。英語の頭文字を取って、VE(価値工学)と表現されることが多い。また、バリューアナリシス(Value Analysis、VA:価値分析)とも呼ばれている。
製造業においては、設計段階でのデザインや製品改良、金型設計や製造方法を考える場面などで用いられ、バリューエンジニアリングにおける価値、機能、コストの関係は、以下の式によって表される。
- 価値(Value)= 機能(Function) / コスト(Cost)
つまり、価値を高めるための手法は主に以下の3つと考えられる。
- 同コストで機能を向上させる
- 同機能でコストを削減する
- 低コストで機能を向上させる
日本VE協会では「最低のライフサイクルコストで、必要な機能を確実に達成するために、製品やサービスの機能的研究に注ぐ組織的努力である」と定義され、すなわち、単にコストダウンを図るのではなく、あくまで機能とコストの両面から価値の向上を図ることがバリューエンジニアリングの目的となる。
バリューエンジニアリングの基本原則
バリューエンジニアリングを効果的に進めるために、押さえておきたい以下の基本原則がある。
- 使用者優先の原則
顧客はどのような機能を求め、何に価値を置いているのか、顧客の立場で何を必要としているか追及する。
- 機能本位の原則
果たすべき機能を明確にして改善する。
- 創造による変更の原則
自由な発想や工夫により固定概念にとらわれず、根本的・抜本的な改善・価値の創造を図る。
- チームデザインの原則
各専門分野から知識や経験を集めて、チームで改善を図る。 - 価値向上の原則
機能とコストの相関を分析し、価値が最も高まるアプローチを探る。
バリューエンジニアリングの進め方
バリューエンジニアリングの実施手順は、3つの基本ステップと、10の詳細ステップ、それらに付随するVE質問によって構成される。
- VE基本3ステップ
①機能定義(分解):顧客の求める価値に関する情報の収集、必要となる機能の定義等を整理する。
②機能評価(分析):機能別のコスト分析と評価を行い、VE対象分野を選定する。
③代替案作成(創造):アイデア発想とその評価を行い具体化する。
- VE詳細10ステップとVE質問
①情報収集:「それは何か?」
②機能定義:「その働きは何か?」
③機能の整理:「何のため(目的)?」「どのようにして(手段)?」
④機能別コスト分析:「そのコストはいくらか?」
⑤機能評価:「その価値は?」
⑥対象の選定:「その価値は?」
⑦アイデア発想:「他に同じ働きをするものはないか?」
⑧概略評価:「コストはいくらか?」「必要な機能を確実に果たすか?」
⑨具体化:「コストはいくらか?」「必要な機能を確実に果たすか?」
⑩詳細評価:「コストはいくらか?」「必要な機能を確実に果たすか?」
バリューエンジニアリングの効果
バリューエンジニアリングの本質は価値の向上にある。そして、価値の向上には次に示す2つの方向がある。
- 機能に着目し、機能や仕様の開発を重視する
- コストを対象とし、原価低減、すなわちコストダウンを狙う
考え方はシンプルであるが、いざ実行しようとしても簡単に実践できるものではない。しかし、実践を繰り返してくことで開発された手法、実践の過程で技術力や想像力などが向上し事業の質や社員のレベルが向上することが、バリューエンジニアリングの効果だと言える。
まとめ
本記事の内容をまとめると次の通りです。
- バリューエンジニアリングとは、製品やサービスの「価値」を「機能」と「コスト」との関係で捉え、価値を高める手法である。
- バリューエンジニアリングを効果的に進めるためには、押さえておきたい5つの基本原則がある。
- バリューエンジニアリングの実施手順は、3つの基本ステップと、10の詳細ステップ、それらに付随するVE質問によって構成される。
- バリューエンジニアリングを実践していく過程で身に付いた事業の質や社員レベルの向上こそが、バリューエンジニアリングがもたらす効果と言える。