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2023.04.25 マーケティング便り

これが試作部署に配属された若者の本音だ!~試作部署の長い1日:前編

図研プリサイト 大出洋輝

皆さまこんにちは。図研プリサイトの大出です。

4月ということで、所属部門に新入社員が配属されてきたという方も多いかと思います。
個人的なことを申しますと、今IT屋さんにいるわけですが、その昔、ある組立型製造業の試作部門に新卒で配属された経験があります。
今日は私が新入社員として試作部門に配属された頃の思い出話にお付き合いいただけたら嬉しいです。

なかなか他のメーカーの話を聞くこともないかと思いますので、「他もこんな感じか」「新入社員の目から見るとこんな風に映るのか」等、何かのご参考になれば幸いです。

私が配属になったのは作業着が真っ黒になってようやく一人前の世界。朝工場に入り、ふと気づけば遠き山に陽は落ちて、月明かりに照らされた木立を横目にドデカミンでカロリーメイトを流し込む日々。

T1、戦いの始まり

皆さんはT1という響きから何を感じるでしょうか。
妻も製造業で開発をやっていたことがあるので聞いてみましたが、苦い顔をしていました。

ただ、少なくともT0よりはマシですよね。いちいちニッパーでパチンパチンやらなくても、一応ちゃんとモノが組める程度には設変が入っています。(T0では、ピンがオス同士、ネジ穴が反転していてドリルを逆回転にしないとネジが打てない等、色々経験しました)

そのT1の始まりは土曜朝8時。当然のように休日出勤から場面は始まります。

だって試作しようにもラインが空いていないんですもの。同期が皆、楽しく都会で休日を過ごす中(こういうのが見えるのでSNSって残酷です)、なぜ自分1人だけ山の中で試作に文字通り明け暮れなくてはならないのか。考えたら終わりです。心を無にしてレジャー客でにぎわう高速を飛ばして出勤しました。

私は新人なので、この日は頼れる先輩B氏も出勤いただき、生技部のT氏も含めて3人チームで試作をしていきます。目標個数(お客様に納品する数)は30個。しかし部品が上がってきた時点で外観不良など、使えないものもあったため余裕は各パーツ2,3個しかありません。

「ミスったら終わりだに~」と遠州弁の生技担当者T氏。

「まぁ、頑張っていきましょう!」と頼れる先輩B氏。「頑張ります」と私。

でもこれはT1です。無事に終わるはずがないのでした。

試作の怪物が牙を剥く

試作というプロセス自体、不都合な点を洗い出すために行うものなので、ここで失敗しておいて良かったね、という話になるのですが、作業する側からしたらそんなキレイごとでは済まされません。むしろ、落ちる必要のない穴にこそ落ちるのが試作です。

「大出君、この接着剤塗布用のノズル(Φ2)は、この工場に1本しかないから絶対に折ったらあかんよ?じゃ、僕は他の作業してくるから!」
と生技T氏が忠告してくれます。

作業自体は簡単ですので恐るるに足りません。目の前には接着剤塗布用のマシンがあり、私は部品AとBを治具にセットしたら起動ボタンを押すだけ。さすればたちまち部品Aの接着面に熱硬化接着剤が自動塗布され、その後部品Bを圧着してくれるのです。
セットしてボタンを押すだけ。こんな作業誰がミスするんだ……と思いました。そのあとは頼れる先輩B氏が半製品をまとめて別フロアの恒温庫(恒温機)に入れ、接着剤が硬化すれば完成、という寸法です。なんて素敵な流れ作業でしょうか。

30個さっさと作りきって帰りにはスーパー銭湯に行ってやる、くらいのことを考えていたのです。そのときは。

が、これはT1なので設備の設定も治具も完璧ではなく、部品が上手くセットされていなくてもマシンが起動できてしまう、という事実に気が付いたのは、4個目あたりで部品Aのセッティングがズレたまま起動し、塗布アームが部品Aに激突、無残にも折れた塗布ノズルから出る接着剤が試作品を真っ黒に染め始めたときでした。

「この工場に1本しかないから絶対に折ったらあかんよ?」
という生技T氏の声が頭の中でこだまします。

ノズルは1個しかないのに。今日作らないと納品間に合わないのに。
そもそも予備の部品だって2,3個しかないのに、目の前には接着剤で真っ黒になった不良品が1つ。(熱硬化の真っ黒な接着剤、かつ外観を気にする必要がある製品なのでもうどうしたって救えませんでした)

残りおよそ25個、作りきれるのか??

一瞬気が遠くなりかけましたが、一人で考えていても仕方ないのでひとまず生技T氏のPHSに連絡します。社会人のキホンは報連相と習ったからです。

「Tさん!ノズル折りました!セットミスったみたいです!」

「折った!?もう!?折った!?!?ちょっと今戻るから待ってて」

「はい、わかりました!」

今にして思えば、もう少しくらい責められても良さそうなもんですが、もう休日に出勤している時点でお互い同情しつつ1つの目標に向かって速やかに仕事をこなす、というような湿っぽくも妙に前向きな連帯感があるので、こんな感じだったのかなと……。

「これ、こんなふうにテープで戻したら上手く塗れたりしないもんだに?」と生技T氏は手際よく塗布ノズルを修繕します。
「なんとかなりますかね?」と私。

今度はきちんと部品もセットできたのを確認してもらってマシンの起動ボタンを押します。
するとそこには、接着剤を派手にまき散らしながら動きだすアームの姿が!!

「ダメだっただに~」とT氏。

「ダメでしたね」と接着剤まみれの半製品を治具から外す私。

二人とも真顔で「はっはっは」と声を上げます。
これで予備のパーツは0個。あとは1個もミスできないという袋小路に追い込まれたわけです。

そして、「大出君、君は今日からパティシエになるだに!」と渡されたのは、「タップリ接着剤が入ったビニール袋の角をハサミでチョッキンしたもの」です。「なるほど、俺が塗布アームだ!」ということですね。イメージはこれです。

素敵な機械化の世界から、(新卒)職人の手作業に。作業効率は1/3くらいになりました。

ちょっと力加減を間違えると粘度が高い接着剤はあらぬ方向に飛び出すので、作業着はすぐに真っ黒になりました。作業着はいいですが、試作品の外観だけは何としてでも守らねばなりません。

既にフルカウントの状態からファールで25球粘るしかない、というような勝ち筋が全く見えない試作ですが、この後もまだまだ紆余曲折が続きます。
いい加減長くなってきたので、今回は前編とし、後半は来月まで引っ張ります。

果たして頼れる先輩B氏の活躍は?T1品は無事納期に間に合ったのか?
あとひと月、お付き合いください。

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